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同じ症状でも人それぞれ?漢方が教えてくれるあなたの体の声

Tags: 漢方, 証, 体質, 漢方入門, 漢方選び方

多くの人が抱く疑問「同じ症状なのに、なぜ違う薬?」

初めて漢方に触れる方が戸惑うことの一つに、「同じような体の不調を感じているのに、人によって勧められる漢方薬が違うのはなぜだろう?」という疑問があるかもしれません。例えば、同じ肩こりでも、ある人は葛根湯(かっこんとう)を勧められ、別のある人は別の漢方薬を勧められるといったケースです。

西洋医学では、病名や症状に特化して治療法や薬が選ばれることが多いですが、漢方では、症状そのものだけでなく、その方の体質や体の状態全体を見て診断し、使う漢方薬を決めていきます。この「その方の体質や体全体の状態」を指すのが、漢方独特の考え方である「証(しょう)」です。

この記事では、なぜ同じ症状でも人によって使う漢方薬が違うのか、そして漢方でいう「証」とはどのような考え方なのかについて、分かりやすくご説明いたします。

漢方が大切にする「個」への着目

漢方では、体を一つのまとまりとして捉え、体の内外のバランスが崩れたときに不調が現れると考えます。そして、同じ「肩こり」や「冷え」といった症状であっても、その症状が現れるに至った原因や、その方の持つ体質、体力の有無、体全体のバランスの状態は一人ひとり異なります。

例えば、同じ肩こりでも、次のような違いがあるかもしれません。

これらの肩こりは、症状は「肩こり」として現れていても、根本的な原因や体の状態が全く異なります。漢方では、この根本的な原因や体質を見極め、「証」として判断することで、その方に本当に合った漢方薬を選びます。

漢方の診断基準となる「証(しょう)」とは?

「証」とは、漢方における診断結果であり、その人の体質や体力、病気の状態などを総合的に判断したものです。簡単に言うと、「今のあなたの体はどのような状態にあるか」を示す指標です。

漢方では、問診(詳しくお話を伺うこと)、舌の色や形を見ること、脈の状態を診ること、お腹の状態を触って診ることなど、様々な方法で体の状態を細かく把握し、その方の「証」を見極めます。

例えば、体力がある方、体力がない方、体が冷えやすい方、のぼせやすい方、胃腸が弱い方、精神的に不安定になりやすい方など、人によって体の状態は様々です。漢方ではこれらの違いを重視し、「実証(じっしょう)」「虚証(きょしょう)」「寒証(かんしょう)」「熱証(ねっしょう)」といった言葉を用いて「証」を表現することがあります。

同じ症状でも、「体力があって、体に余分なものが滞っている『実証』の人」と、「体力がなく、体の機能が衰えている『虚証』の人」とでは、当然、使う漢方薬も異なります。これは、体全体のバランスを整え、根本原因にアプローチするという漢方の考え方に基づいているためです。

自分に合った漢方を見つけるために

このように、漢方薬選びにおいて最も大切なのは、ご自身の「証」に合ったものを選ぶことです。しかし、ご自身の「証」を正確に判断するには、漢方医学の専門的な知識が必要です。

そのため、漢方薬を試してみたいとお考えの場合は、自己判断ではなく、漢方に詳しい医師、薬剤師、または登録販売者にご相談されることを強くお勧めいたします。専門家は、あなたの症状だけでなく、体質や日頃の生活習慣なども詳しく伺い、あなたの「証」を見極めて、最適な漢方薬を選んでくれます。

体は一人ひとり違います。「あなたの体の声」に耳を傾け、それに寄り添う漢方という選択肢について、専門家と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

漢方は、あなたの体に寄り添うオーダーメイドのような考え方に基づいています。ぜひ専門家の力を借りて、あなたの体に合った漢方を見つけてください。