漢方と西洋医学、どう違う?それぞれの得意なこと
漢方と西洋医学、それぞれの特徴を知ることから
年齢を重ねるにつれて、体のあちこちに今までとは違うサインが現れることがあります。たとえば、若い頃には感じなかった膝や腰の重さ、夜中に何度も目が覚める、以前よりトイレが近くなったなど、日々の生活の中で気になる不調と向き合う機会が増えるかもしれません。
こうした体の変化を感じたとき、多くの方がまず考えるのは、病院で医師に相談することでしょう。病院で行われるのは主に「西洋医学」に基づいたアプローチです。一方で、最近は「漢方」という言葉を耳にすることも増え、気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
「漢方と病院での治療は、何が違うのだろう?」「どちらが良いのだろうか?」そう思われる方もいらっしゃるかと思います。漢方と西洋医学は、体の見方や不調へのアプローチの方法が異なります。どちらかが優れている、劣っているというわけではなく、それぞれに得意なこと、苦手なことがあります。
この機会に、漢方と西洋医学、それぞれの特徴について理解を深めてみませんか。ご自身の体の状態に合わせて、どのように健康と向き合っていくか、そのヒントが見つかるかもしれません。
西洋医学の得意なこと
私たちが普段、風邪をひいたり、怪我をしたりしたときに受診する病院で行われる治療は、主に西洋医学です。西洋医学は、病気の原因を特定し、その原因に対してピンポイントで対処することを得意としています。
例えば、細菌やウイルスの感染であれば抗生物質や抗ウイルス薬を使用する、炎症があればそれを抑える薬を使う、あるいは異常がある部分を手術で取り除くなど、病気そのものや不調の原因に直接働きかける治療法が中心となります。
特に、急性の病気や生命に関わるような重篤な状態、怪我などに対しては、迅速な診断と処置が可能であり、目覚ましい効果を発揮します。検査機器による数値や画像診断など、客観的なデータに基づいて診断を行うことも、西洋医学の大きな特徴と言えるでしょう。
- 得意なことの例:
- 急性疾患(肺炎、盲腸炎など)の治療
- 感染症への対処
- 怪我や骨折の処置、手術
- 救急医療
- 癌や重篤な病気への治療
- 病気の原因特定とピンポイント治療
漢方の得意なこと
それに対して漢方は、体の不調を「病気」という特定の名前で区切るよりも、体全体のバランスの乱れとして捉える考え方が基本にあります。漢方では、私たちの体を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素のバランスで成り立っていると考えます。(気は生命エネルギー、血は血液とその働き、水は血液以外の体液や潤いを指します。)
体のどこかに不調が現れるのは、この「気・血・水」のいずれかが不足したり、滞ったり、バランスが崩れたりしているためと考えます。そのため、漢方によるアプローチは、不調が出ている部分だけを見るのではなく、体全体の状態、つまり「体質」を重視し、バランスを整えることを目指します。
例えば、同じ「頭痛」という症状でも、ある人には「気が滞っている」と考え、別の人には「血が不足している」と考えるなど、その人の体質や他の不調も考慮して漢方薬を選びます。このように、体全体の調和を取り戻すことで、結果として不調が改善に向かうことを目指すのです。
- 得意なことの例:
- 体質改善
- 慢性的な不調(肩こり、冷え性、疲れやすいなど)
- 西洋医学的な検査では異常が見つかりにくい不定愁訴
- 加齢に伴うさまざまなマイナートラブル
- 病気になりやすい状態(未病)のケア
- 体全体のバランス調整と自己回復力の向上
- 病気ではないけれど「なんとなく調子が悪い」状態の改善
漢方と西洋医学、賢く付き合うには
では、私たちは体の不調に対して、どのように漢方と西洋医学を選択し、向き合っていけば良いのでしょうか。
重要なのは、「どちらが良い・悪い」と決めるのではなく、それぞれの特徴を理解し、ご自身の体調や目的に合わせて賢く使い分ける、あるいは必要に応じて併用を検討するということです。
急な高熱が出た、強い痛みがある、怪我をしたなど、体の異変が急激に現れたり、重い病気の可能性が考えられたりする場合は、迷わず病院を受診し、西洋医学的な診断と治療を受けることが大切です。
一方で、「長年、冷え性に悩んでいる」「季節の変わり目にいつも体調を崩しやすい」「検査では特に異常はないと言われたけれど、どうも体がだるい」といった、慢性的な不調や、病気とまでは言えないけれど気になる症状が続く場合は、漢方による体質改善のアプローチが適している可能性があります。
専門家への相談が大切です
漢方薬は、体質や症状によって合うものが異なります。自己判断で選ぶよりも、医師、薬剤師、または登録販売者といった漢方の専門知識を持つ方に相談することをおすすめします。
専門家は、あなたの現在の症状だけでなく、体質、普段の生活習慣、これまでの病歴などを詳しく伺い、今のあなたに最も合った漢方薬を選んでくれます。また、すでに西洋薬を服用している場合でも、漢方薬との飲み合わせについて適切に判断し、アドバイスしてくれますので安心です。
漢方薬の中には、健康保険が適用されるものもありますので、「高価そう」というイメージだけで敬遠せず、まずは専門家にご相談ください。
まとめ
漢方と西洋医学は、それぞれ異なる視点から私たちの体と向き合っています。西洋医学は病気の原因に焦点を当て、ピンポイントで対処することを得意とし、特に急性期や重篤な状態に力を発揮します。一方、漢方は体全体のバランスを整え、体質を改善することを得意とし、慢性的な不調や未病へのアプローチに適しています。
ご自身の体の状態に合わせて、これらのアプローチを適切に選び、必要に応じて専門家にご相談いただくことが、健やかな毎日を送るための大切な一歩となるでしょう。