年齢とともに気になる体のサイン、「気・血・水」で読み解く漢方の知恵
年齢とともに感じる体の変化、そのサインは何を示しているのでしょう?
年齢を重ねるにつれて、「以前より疲れやすくなった」「よく眠れない日が増えた」「体が冷えやすい」「なんだか体がむくむ」といった、漠然とした不調を感じることはありませんか。これらのサインは、私たちの体が発する大切なメッセージかもしれません。
西洋医学では、病気の原因を特定し、その病気そのものを治療することを目指します。一方、漢方では、これらの不調を単なる個別の症状として捉えるのではなく、体全体のバランスの乱れとして考えます。そして、そのバランスを整えることで、体が本来持っている健やかさを取り戻すことを目指します。
初めて漢方を知る方にとって、「なんだか難しそう」「自分の不調とどう関係するの?」と感じるかもしれません。しかし、漢方の考え方の基本を知ることで、ご自身の体の状態をより深く理解する手がかりになります。ここでは、漢方の基本的な考え方の一つである「気・血・水」(き・けつ・すい)について、分かりやすくご説明します。
漢方の基本的な考え方:「気・血・水」とは
漢方では、私たちの体は「気」「血」「水」という3つの要素が、体内を巡り、バランスを取り合うことで健康が保たれていると考えます。これらのどれか一つでも、量や巡りに滞りが生じたり、バランスが崩れたりすると、体に不調が現れると考えるのです。
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気(き): 生命活動のエネルギーのようなものです。目には見えませんが、体を動かしたり、温めたり、精神を安定させたりする働きを担っています。「やる気が出ない」「疲れやすい」「気分がふさぐ」といった状態は、「気」が不足していたり、滞っていたりするサインかもしれません。
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血(けつ): いわゆる血液とその働き全般を指します。全身に栄養や酸素を運び、体を養う役割があります。「顔色が悪い」「めまいがする」「手足がしびれる」「乾燥しやすい」といった状態は、「血」が不足していたり、巡りが悪かったりするサインかもしれません。
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水(すい): 血液以外の体液全般を指します。リンパ液や唾液、汗、消化液、尿など、体内の水分すべてのことです。体を潤したり、老廃物を運び出したりする役割があります。「むくみやすい」「体が重だるい」「めまいがする」「口が渇く」といった状態は、「水」が滞っていたり、不足していたりするサインかもしれません。
あなたの不調はどれに当てはまる?「気・血・水」のバランスの乱れと不調の例
加齢に伴って感じやすい様々な不調は、「気」「血」「水」のバランスの乱れと深く関わっていると考えられます。
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「気」の乱れ:
- 気が不足(気虚 - ききょ): 元気がない、疲れやすい、だるい、食欲不振、風邪を引きやすいなど。加齢とともに「気」が消耗しやすくなると考えられます。
- 気が滞る(気滞 - きたい): イライラしやすい、落ち込みやすい、お腹が張る、喉の詰まり感など。ストレスなどが原因となることがあります。
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「血」の乱れ:
- 血が不足(血虚 - けっきょ): 顔色が悪い、めまい、立ちくらみ、髪や肌の乾燥、爪が割れやすい、不眠、女性の生理不順など。「血」を養う力が弱まると生じやすくなります。
- 血が滞る(瘀血 - おけつ): 肩こり、腰痛、頭痛、手足の冷えやしびれ、あざができやすい、シミやくすみが気になるなど。血行不良が原因となることがあります。
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「水」の乱れ:
- 水が滞る(痰湿 - たんしつ): むくみ、体が重だるい、めまい、吐き気、食欲不振、関節痛など。水分の代謝が悪くなることで生じます。
- 水が不足(陰虚 - いんきょ): 口や喉の渇き、肌や髪の乾燥、空咳、ほてり、寝汗、便秘など。体を潤す「水」が不足することで生じます。
例えば、膝や腰の痛みも、単なる関節の問題だけでなく、「血」の滞り(瘀血)や「気」「血」の不足(気虚・血虚)が関連していると考えられたりします。頻尿や不眠も、「水」の代謝異常や「気」「血」の不足、あるいは「気」の滞りなどが影響している可能性が漢方では考えられます。
バランスを整えるために、そして専門家への相談を
このように、「気・血・水」という視点を持つことで、ご自身の体調不良が、体のどの要素のバランスが崩れているサインなのかを考えるきっかけになります。バランスを整えるためには、日々の生活習慣(バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスケアなど)を見直すことが大切です。
そして、自分に合った漢方薬を選ぶ際には、この「気・血・水」のバランスの状態を含めた、体全体の様々な情報を考慮する必要があります。同じような症状でも、体質や背景が異なれば、適した漢方薬も変わってきます。
漢方薬は、薬局やドラッグストアでも手に入りますが、ご自身の体の状態を正確に把握し、本当に合った漢方薬を選ぶためには、自己判断はせずに、必ず医師、薬剤師、または登録販売者といった漢方の専門知識を持つ方にご相談ください。専門家は、問診などを通してあなたの「気・血・水」の状態や体質を見極め、適切なアドバイスや漢方薬を提案してくれます。
「難しそう」と感じていた漢方も、「気・血・水」という基本的な考え方を知ることで、少し身近に感じていただけたのではないでしょうか。体の声に耳を傾け、「気・血・水」のバランスを意識することで、より健やかな毎日を送るためのヒントが見つかるかもしれません。