漢方選びの第一歩:まずはあなたの体質を知りましょう
漢方選びで大切なこと:なぜ「体質」が鍵となるのか
加齢とともに体のあちらこちらに不調を感じることは、多くの方が経験されるのではないでしょうか。膝や腰の痛み、夜中に目が覚める、トイレが近いなど、気になる症状は様々です。そんな時、「漢方」という言葉を耳にされるかもしれません。
しかし、「漢方って難しそう」「種類がたくさんあって、どれを選べばいいのか分からない」と感じ、なかなか一歩を踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
実は、漢方を始めるにあたって、まず最初の一歩としてとても大切になる考え方があります。それが、ご自身の「体質」を知るということです。
漢方でいう「体質」とは? 西洋医学との違い
西洋医学では、体の不調に対して、病名をつけて原因を特定し、その原因を取り除く、あるいは症状を抑えるというアプローチが一般的です。例えば、痛みが強ければ痛み止め、炎症があれば炎症を抑える薬、といった具合です。
一方、漢方では、病名だけでなく、その人が本来持っている体の傾向や、現在の体のバランスがどうなっているのか、といった全体像を非常に重視します。これを「証(しょう)」とも呼びますが、分かりやすく言うと、その人固有の「体質」や「体の状態」のことです。
漢方の考え方では、同じ「膝が痛い」という症状であっても、その原因や背景にある体の状態は一人ひとり異なると考えます。例えば、
- 体の冷えが原因で痛む方
- 体の水分代謝が悪く、むくみを伴って痛む方
- 加齢や栄養不足によって、足腰が弱って痛む方
など、様々なケースが考えられます。
このように、漢方では症状そのものだけでなく、なぜその症状が出ているのかという、その人全体の体のバランスや状態、つまり「体質」に目を向けます。そして、その乱れたバランスを整えることで、症状の改善を目指すのです。
なぜ、体質を知ることが漢方選びに重要なのか
漢方薬は、この「体質」や「証」に合わせて選ばれます。同じ症状に用いられる漢方薬でも、体質が異なれば適した漢方薬も変わってきます。
例えば、風邪のひきはじめに用いられる有名な漢方薬に「葛根湯(かっこんとう)」がありますが、これは比較的体力のある方向けとされています。もし体力がなく、胃腸が弱い方が服用すると、かえって体調を崩してしまうこともあります。
このように、ご自身の体質に合っていない漢方薬を選んでしまうと、期待した効果が得られないばかりか、思わぬ不調を招く可能性も否定できません。
だからこそ、漢方を取り入れる際には、まずはご自身の体質や体の状態を知ることが、自分に合った漢方を見つけ、効果を実感するための大切な第一歩となるのです。
自分の体質を知るには?
ご自身の体質について、「冷えやすい」「むくみやすい」「疲れやすい」など、日頃から感じている体の傾向を振り返ってみることも参考になります。
しかし、漢方における体質の判断は、体の状態を総合的に見て行われるため、ご自身だけで正確に判断するのは難しい場合があります。
そこでおすすめしたいのが、漢方に詳しい専門家に相談することです。医師や薬剤師、登録販売者といった専門家は、症状だけでなく、普段の生活習慣、食欲、睡眠、冷えやのぼせの有無、便や尿の状態など、様々な質問を通して、その方の体質や体のバランスを丁寧に読み解いていきます。
これらの情報は、ご自身の体質に合った漢方薬を選ぶ上で非常に貴重な手がかりとなります。専門家は、その診断に基づいて、数ある漢方薬の中から今のあなたの体に最も適したものを提案してくれます。
まとめ:体質を知り、自分に寄り添う漢方と出会うために
漢方は「怖いもの」「難しいもの」ではありません。まずは、ご自身の体質に目を向けることから始めてみませんか。
体の傾向を知ることは、漢方を選ぶ上での大切な指針となります。そして、自分自身の体の声に耳を傾け、専門家の力を借りながら、今のあなたに寄り添ってくれる漢方と出会うことができれば、日々の不調の改善に繋がるかもしれません。
ぜひ、お近くの漢方を取り扱っている医療機関や薬局などで、気軽に相談されてみてはいかがでしょうか。