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漢方選びの鍵は「証」にあり:今の体に合った漢方を見つける考え方

Tags: 漢方選び, 証, 体質, 漢方相談, 専門家

漢方選びに迷ったら:「証」という考え方をご存知ですか

漢方薬に興味をお持ちいただいたものの、いざ選ぶとなると、たくさんの種類があって「どれを選べば良いのだろうか」とお悩みになる方もいらっしゃるかもしれません。ドラッグストアの棚を見ても、様々な症状に効くと書かれていますが、どれが今の自分に合っているのか判断は難しいものです。

漢方薬を選ぶ上で、非常に大切になる考え方に「証(しょう)」というものがあります。初めて耳にする方もいらっしゃるかもしれませんが、この「証」こそが、その方に合った漢方薬を見つけるための鍵となります。

「体質」と「証」は何が違うのでしょうか

漢方では、その方が生まれ持った体の傾向を「体質」と捉えることがあります。例えば、「胃腸が弱い体質」「冷えやすい体質」といった捉え方です。

一方、「証」とは、その時々の体の状態を指します。同じ「冷えやすい体質」の方でも、ある時は風邪をひいて熱があり、ある時はお腹の調子が悪く、またある時は肩こりがひどいなど、体調は日々変化します。この、その時の体の状態、具体的には現れている症状や体力、体格などを総合的に判断したものが「証」です。

漢方薬は、この「証」に合わせて選ばれることが最も効果的とされています。例えば、風邪一つをとっても、寒気がするもの、熱っぽいもの、咳がひどいものなど、様々な状態があります。西洋医学では同じ風邪薬が処方される場合でも、漢方ではその時の「証」に合わせて異なる漢方薬が用いられるのです。

なぜ「証」に合わせた漢方選びが大切なのでしょうか

漢方薬は、特定の病気や症状だけに効果があるというよりは、体のバランスを整えることで、不調の根本的な改善を目指すものです。私たちの体は、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という要素が滞りなく巡り、バランスが保たれていることで健康を維持していると考えます。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とその働き、「水」は血液以外の体液全般を指します。

しかし、加齢や日々のストレス、生活習慣の乱れなどにより、この「気・血・水」のバランスが崩れたり、巡りが滞ったりすることがあります。これが体に様々な不調として現れると考えられます。例えば、膝や腰の痛み、頻尿、不眠といった加齢に伴う不調も、こうした体のバランスの乱れや巡りの滞りが原因となっている場合があります。

「証」は、この「気・血・水」をはじめとする体の状態を総合的に判断したものです。その方の「証」に合った漢方薬を選ぶことで、体のバランスの乱れを整え、滞りを改善し、本来持っている回復力を引き出すことを目指します。体質的に冷えやすい方でも、その時たまたま体に熱がこもっている「証」であれば、体を温める漢方薬ではなく、熱を冷ます漢方薬が選ばれる、といったこともあり得ます。

どのように「証」を見極めるのでしょうか

漢方では、「証」を見極めるために、様々な情報を集めます。例えば、

これらの情報を総合的に判断して、その方の「証」を診断します。これを「弁証(べんしょう)」といいます。

ご自身の「証」をご自身だけで正確に判断することは、専門的な知識が必要なため難しいのが現状です。

自分に合った漢方を見つけるために:専門家への相談を

漢方薬は、同じ名前の不調でも、その方の「証」によって選ぶべきものが変わってきます。そのため、自己判断で漢方薬を選ぶよりも、ご自身の体調や「証」について、専門家にご相談いただくことが最も確実で安心な方法です。

医師、薬剤師、または登録販売者といった漢方の専門知識を持った方々は、お話をじっくり伺い、必要に応じて診断のヒントとなる情報を確認しながら、その時のあなたの体に合った「証」を見極め、適切な漢方薬を提案してくれます。

相談する際には、いつからどのような症状で悩んでいるのか、他に気になる体の状態はないかなど、ご自身のことを詳しく伝えるように心がけてください。

まとめ

漢方薬選びにおいては、「体質」だけでなく、その時の体の状態である「証」を理解することが重要です。ご自身の「証」に合った漢方薬を選ぶことで、より効果的に体のバランスを整え、不調の改善を目指すことができます。

「証」の判断は専門的な知識を要するため、自分自身で判断するのは難しいものです。安心して漢方を活用するためにも、ぜひ医師、薬剤師、登録販売者などの専門家にご相談ください。あなたの今の体に寄り添う漢方薬がきっと見つかることでしょう。