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年齢とともに感じる「だるさ」や「気力低下」。漢方で考えるその原因とケア

Tags: 漢方, 気虚, だるさ, 気力低下, 疲労, 年齢, 養生

年齢とともに気になる体のサイン「だるさ」や「気力低下」

日々の生活の中で、「なんとなく体がだるい」「以前ほどやる気が出ない」と感じることはありませんでしょうか。特に年齢を重ねるにつれて、このような体のサインを感じる機会が増えるかもしれません。

こうした不調は、「年のせいだから仕方ない」と諦めてしまうことも多いかもしれません。しかし、漢方では、このような漠然とした不調にも丁寧に向き合い、その原因を体のバランスの乱れとして捉えてケアしていきます。

初めて漢方を知る方にとって、「だるさ」や「気力低下」といった症状が漢方でどのように考えられるのか、少し難しく感じるかもしれません。この記事では、これらの症状が漢方でどのように捉えられ、どのようなケアが考えられるのかを、分かりやすくご説明いたします。

漢方で考える体の不調:エネルギーの不足「気虚」とは

漢方では、私たちの体を構成し、生命活動を維持するために重要な要素として「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という考え方があります。これらが体内を過不足なく巡り、互いにバランスを取り合っていることで、健康が保たれると考えられています。

「だるさ」や「気力低下」といった症状は、この「気」の働きが関係していると考えられます。「気」は、体に活力を与え、内臓を動かし、病気から体を守るエネルギーのようなものです。西洋医学における自律神経や免疫の働き、あるいは単なるエネルギー源とは少し異なる、漢方独自の概念です。

もし、この「気」が足りなくなってしまうと、全身に十分なエネルギーが行き渡らなくなり、様々な不調が現れます。この状態を漢方では「気虚(ききょ)」と呼びます。

「気虚」からくる主なサイン

気虚の状態になると、体には様々なサインが現れることがあります。年齢とともに感じやすい「だるさ」や「気力低下」は、その代表的なサインの一つです。

これらのサインは、加齢による体力の変化とも重なる部分が多く、見過ごされがちです。しかし、漢方ではこれを単なる老化現象と捉えるのではなく、「気」が不足している状態としてケアの対象と考えます。

なぜ「気」は不足するのでしょうか

「気」が不足する原因は一つだけではありません。様々な要因が複合的に絡み合って、気虚の状態を引き起こすと考えられます。

漢方的な「気虚」へのアプローチ

気虚の状態に対して、漢方では主に「補気(ほき)」、つまり「気」を補うという考え方でアプローチします。体の内側からエネルギーを作り出し、全身に活力を巡らせることを目指します。

具体的な方法としては、以下のようなものが考えられます。

漢方薬によるケア

気虚に使われる代表的な漢方薬には、失われた「気」を補い、胃腸の働きを助けることで体全体の調子を整えるものがあります。例えば、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などは、だるさや疲労感、気力低下などに用いられる代表的な漢方薬の一つです。

ただし、漢方薬の選択は、単に症状だけで判断するのではなく、その方の体質や他の症状、生活習慣などを総合的に見て行われます。

日常生活でのケア(養生)

漢方薬だけでなく、日々の生活習慣を見直すことも非常に重要です。「気」を養い、消耗させないための養生は、漢方的なケアの基本です。

自分に合ったケアを見つけるために

年齢とともに感じる「だるさ」や「気力低下」は、見過ごしがちながらも、体の声である可能性があります。漢方的な視点から「気虚」という状態を知ることで、ご自身の体調を別の角度から見つめ直すきっかけになるかもしれません。

しかし、ご自身の判断だけで漢方薬を選んだり、ケア方法を決めたりするのは難しい場合もあります。漢方薬は、その方の体質や証(しょう)と呼ばれる状態によって合うものが異なります。

もし、ご自身の不調について漢方でのケアを検討したい場合は、必ず医師や薬剤師、登録販売者といった専門家に相談してください。専門家は、あなたの体の状態を詳しく伺い、適切な漢方薬の選択や、日常生活でのアドバイスをしてくれるでしょう。

「難しそう」「高価そう」といったイメージを持たれることもある漢方ですが、専門家のサポートを得ながら、ご自身のペースで取り入れていくことが可能です。保険適用される漢方薬も多く存在します。

体の声に耳を傾け、漢方の知恵も借りながら、年齢を重ねてもいきいきと過ごせるよう、ご自身に合ったケアを見つけていただければ幸いです。