初めての漢方薬選び:たくさんある種類からあなたに合うものを見つけるヒント
漢方薬の選び方、迷っていませんか?
「体の不調に漢方が良いと聞いたけれど、薬局に行ったらたくさんの種類があってどれを選べばいいか分からない」 初めて漢方薬を手に取る際、このように感じられる方は少なくないでしょう。パッケージには聞き慣れない名前が並び、「難しそう」と感じてしまうかもしれません。
でもご安心ください。漢方薬には、その種類が多い理由があり、選び方にも一定の考え方があります。このコラムでは、漢方薬の種類について分かりやすく解説し、ご自身に合った漢方を見つけるための基本的なヒントをお伝えいたします。
漢方薬の種類を知る:剤形と構成の違い
まず、漢方薬がどのような形(剤形)で提供されているかを見てみましょう。主な剤形は以下の通りです。
- 煎じ薬(せんじやく): 刻んだ生薬(しょうやく)を土瓶などで煮出して作るもので、最も古くからある剤形です。生薬の種類や量を細かく調整できるため、お一人お一人の状態に合わせて処方を組むことができます。手間はかかりますが、生薬本来の力を引き出しやすいとされています。
- エキス剤(えきすざい): 煎じ薬を濃縮し、乾燥させて顆粒(かりゅう)や錠剤、カプセルにしたものです。お湯に溶かして飲む顆粒タイプが一般的です。携帯に便利で、調剤薬局や病院で処方される医療用漢方薬、薬局・ドラッグストアで購入できる一般用漢方薬の多くがこのタイプです。手軽に服用できるのが大きな利点です。
- 丸薬(がんやく): 生薬の粉末を蜂蜜などで丸めたものです。
初めての方がドラッグストアなどで目にするのは、主にエキス剤の顆粒や錠剤タイプでしょう。これらは、古くからある漢方の古典に記載された処方に基づいて、品質が一定になるように作られています。
また、漢方薬は「構成する生薬の数」や「出典となった古典」によって分類されることもありますが、初めての方がまず知っておきたいのは、ご自身の「今の体の状態」に合っているかということです。
なぜ漢方薬は種類が多いのでしょう?
「〇〇という症状に効く」とされている西洋薬に比べ、漢方薬は同じ症状であっても複数の種類があったり、全く異なる症状に同じ漢方薬が使われたりすることがあります。これは、漢方が症状そのものだけでなく、その症状がなぜ起きているのか、お一人お一人の体質や全体の状態(これを「証(しょう)」と呼びます)を重視して処方を選ぶためです。
例えば、「膝の痛み」一つをとっても、冷えが原因で痛むのか、血行が悪くて痛むのか、加齢とともに体が栄養不足になっているために痛むのかなど、様々な原因が考えられます。漢方では、それぞれの原因やその方の体力、体質を見極め、最も適した処方を選択するのです。だからこそ、漢方薬の種類は多岐にわたるのです。
自分に合った漢方を見つけるためのヒント
では、数ある漢方薬の中から、どのように自分に合ったものを見つけたら良いのでしょうか。
- ご自身の体の状態を丁寧に観察する いつから、どのような症状があるのか、どのような時に症状が強く出るのか、体力の程度、胃腸の状態、寒がりか暑がりかなど、ご自身の体についてなるべく詳しく観察してみましょう。問診でこれらの情報が重要になります。
- 専門家に相談する これが最も重要で、確実な方法です。漢方薬の選択は、専門的な知識が必要です。医師、薬剤師、または登録販売者は、あなたの話を聞き、体の状態を詳しく把握した上で、今のあなたに最も合った漢方薬を選ぶ手助けをしてくれます。ドラッグストアの登録販売者の方でも、漢方相談の経験が豊富な方がいらっしゃいますので、ぜひ気軽に相談してみてください。
- 市販薬から試す場合 ドラッグストアなどで購入できる一般用漢方薬は、比較的穏やかに作用するものや、多くの方に合うように作られているものがあります。しかし、ご自身の判断だけで選ぶのは難しい場合が多く、症状が改善しなかったり、かえって不調を感じたりすることもあります。パッケージの説明書きをよく読み、不明な点は必ずお店の専門家(薬剤師や登録販売者)に確認するようにしましょう。安易な自己判断は避け、できれば専門家の助言を得てから選び始めることをお勧めします。
費用について
漢方薬は高価なイメージがあるかもしれませんが、医療用漢方薬であれば、病院で処方される西洋薬と同様に健康保険が適用されます。また、市販薬にも様々な価格帯のものがあります。まずは専門家に相談し、ご自身の予算や希望も伝えてみるのが良いでしょう。
焦らず、専門家と一緒に
漢方薬の数は確かに多いですが、それは一人ひとりの体の状態にきめ細やかに対応するためです。ご自身の判断だけで全てを理解しようとせず、まずは専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談することから始めてみてください。あなたの話をじっくり聞き、今の体に寄り添う漢方薬を一緒に見つけてくれるはずです。
分からないことは恥ずかしいことではありません。どうぞ安心して、漢方の専門家の扉をたたいてみてください。