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薬だけじゃない漢方:毎日の食事と生活でできる体のケア

Tags: 漢方, 養生, 食事, 生活習慣, 体質

はじめに:漢方は薬だけではない「養生」の知恵

漢方というと、煎じ薬や錠剤といった「漢方薬」を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん、漢方薬は体の不調を整えるための大切な手段の一つです。

しかし、漢方の考え方は、薬を飲むことだけにとどまりません。日々の食事や生活習慣に目を向け、体全体のバランスを整えること、これを「養生(ようじょう)」といいます。

養生は、私たちの体が本来持っている回復力を高め、病気にかかりにくい状態をつくることを目指します。これは、体が本来の状態から少しずつずれていくことで起こる、加齢に伴うさまざまな不調に対しても有効な考え方です。

この章では、難しく考えがちな漢方の知恵を、毎日の暮らしの中でどのように活かせるのか、食事と生活習慣を中心にやさしくお話ししていきます。

漢方で考える「養生」とは?体全体のバランスを整える視点

漢方では、私たちの体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」という3つの要素がバランスを取りながら巡っていると考えます。

これら「気・血・水」のいずれかが不足したり、巡りが滞ったり、偏ったりすると、体はバランスを崩し、さまざまな不調が現れると考えます。

養生とは、この「気・血・水」のバランスが乱れないように、あるいは乱れてしまったバランスを整えるために、日々の生活の中で行う工夫のことです。特別なことではなく、毎日の当たり前のことを、少し意識して行うことから始まります。

体質に合わせた食事のヒント

「あなたは〇〇な体質ですね」と漢方で言われたことがあるかもしれません。体質は、生まれ持ったものと、日々の生活習慣や環境によって変化するものがあります。漢方では、一人ひとりの体質に合わせて、適した食事や生活が異なると考えます。

例えば、以下のような体質タイプと食事の一般的な考え方があります。

これらはあくまで一般的な例であり、ご自身の体質を正確に知るためには専門家への相談が有効です。しかし、ご自身の体の感覚(「冷えやすいな」「むくみやすいな」など)に合わせて、食事を少し工夫してみることから始めてみるのも良いでしょう。

毎日の食事は、私たちの体をつくる基本です。バランスの取れた食事を心がけることに加えて、ご自身の体の状態に合った食材を選び、よく噛んでゆっくりいただくことが養生の第一歩と言えます。

日々の生活習慣でできる漢方流セルフケア

食事と同様に、日々の生活習慣も「気・血・水」のバランスに大きく影響します。

これらの生活習慣は、どれも当たり前のことのように思えるかもしれません。しかし、これらを意識して丁寧に行うことが、漢方でいう「養生」につながり、体が本来持つ力を引き出す手助けとなります。

専門家への相談も大切

漢方の養生は、ご自身の体に関心を持ち、できることから少しずつ取り入れることが大切です。しかし、体の不調が続く場合や、ご自身の体質がよく分からない場合は、一人で抱え込まずに専門家へ相談することをお勧めいたします。

医師、薬剤師、登録販売者など、漢方に詳しい専門家は、あなたの話や体の状態から、現在の体質や不調の原因を漢方的な視点で読み解き、食事や生活のアドバイス、あるいは漢方薬の選択肢などを提案してくれます。

日々の養生と専門家のアドバイスを組み合わせることで、より効果的にご自身の体のケアを進めることができるでしょう。

まとめ

漢方の考え方は、薬だけに頼るのではなく、日々の食事や生活習慣である「養生」を通して、体全体のバランスを整え、健やかな状態を保つことを重視します。

「気・血・水」のバランスを意識し、ご自身の体質や体の感覚に合わせて、食事の内容や摂り方、睡眠、運動、冷え対策、ストレスケアといった日々の習慣を少し見直してみることから始めてみませんか。

今日からできる小さな一歩が、未来の健やかな体につながるはずです。ご自身の体とじっくり向き合い、心地よい養生を続けていくことで、加齢に伴う体の変化にもしなやかに対応できるかもしれません。