年齢とともに気になる体の巡り、漢方で考えるその大切さ
はじめに：年齢とともに感じる体の変化と「巡り」
年齢を重ねるにつれて、「前はこんなことなかったのに」と感じる体の変化が増えてくるかもしれません。例えば、冷えやすくなった、むくみやすい、肩や腰がこりやすい、なんとなく体がだるい、といった不調です。
これらの不調は、実は体の「巡り」が滞っていることと関係している場合があります。漢方では、健康な体は「気（き）」「血（けつ）」「水（すい）」という3つの要素が体内をスムーズに巡り、バランスが保たれていると考えます。この巡りが滞ったり、バランスが崩れたりすると、様々な不調が現れると考えられているのです。
この記事では、漢方で考える体の「巡り」について、特に加齢に伴う変化に焦点を当ててご紹介します。ご自身の体調を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。
漢方で考える体の「巡り」とは？
漢方では、私たちの体を健やかに保つために不可欠な要素として「気・血・水」を重視します。
- 気（き）: 生命活動のエネルギーのようなもので、体を温めたり、動かしたり、精神活動を支えたりします。
- 血（けつ）: 全身に栄養や酸素を運ぶ血液と、その働きを指します。体を養い、精神を安定させます。
- 水（すい）: 血液以外の体液全般（リンパ液、細胞間液、汗、尿など）と、その働きを指します。体を潤し、老廃物を運び出します。
これら「気・血・水」が体内を滞りなくスムーズに巡り、それぞれの量が十分でバランスが取れている状態が、漢方でいう健康な状態です。
なぜ年齢とともに「巡り」は滞りやすくなるのか
年齢を重ねると、残念ながら体の機能は徐々に低下してきます。これは、漢方でいう「気・血・水」を生み出し、巡らせる力も弱まってくる可能性があるということです。
例えば、
- 「気」の力が弱まると、体を動かすエネルギーが不足し、だるさや疲れを感じやすくなります。巡らせる力も弱まるため、全体的な滞りに繋がることもあります。
- 「血」を生み出す力が弱まったり、「血」を巡らせる力が衰えたりすると、体のすみずみまで栄養が行き届きにくくなり、冷えや肩こり、肌の乾燥などを招くことがあります。
- 「水」の代謝が悪くなると、余分な水分が体に溜まりやすくなり、むくみやめまい、だるさなどの原因となることがあります。
このように、加齢に伴う体の変化は、「気・血・水」のいずれか、あるいは複数の巡りを滞らせる要因となり得るのです。
「巡り」の滞りが招く不調の例
体の「巡り」が滞ることで現れる不調は様々ですが、年齢とともに感じやすいものとしては、以下のような例が挙げられます。
- 冷え: 「血」や「気」の巡りが悪いと、体の末端まで温かい血液やエネルギーが行き届かず、手足や腰などが冷えやすくなります。
- むくみ: 「水」の巡りが滞り、余分な水分が体に溜まると、顔や手足がむくみやすくなります。
- 肩こり・腰痛: 「気」や「血」の巡りが悪く、筋肉に栄養や酸素が十分に行き渡らないことや、老廃物が滞留することが原因で起こることがあります。
- だるさ・疲れ: 「気」の不足や滞り、あるいは「血」の巡りが悪く全身に栄養が行き渡らないことなどが原因となることがあります。
- 不眠: 「血」が不足して精神を養えなかったり、「気」の巡りが滞って気の乱れが生じたりすることが、眠りの質に影響を与えることがあります。
これらの不調は、一つだけではなく、いくつか同時に現れることも珍しくありません。
体の「巡り」を整えることの大切さ
体の「巡り」を整えることは、既に感じている不調の改善を目指すだけでなく、これから起こりうる不調を予防し、健康な状態を維持するためにも非常に大切です。巡りが良い状態とは、体に必要なものがしっかりと届けられ、不要なものがスムーズに排出される状態であり、体全体が本来持っている力を発揮しやすい状態と言えます。
漢方による「巡り」へのアプローチ
漢方では、「気・血・水」のどこに滞りがあるのか、あるいはどこが不足しているのかを見極め、そのバランスを整えることを目指します。例えば、「血」の巡りが悪い状態（瘀血/おけつ）に対しては、血行を良くする働きを持つ生薬を含む漢方薬が用いられることがあります。「水」の滞り（水滞/すいたい）に対しては、余分な水分を排出する働きを持つ生薬が配合された漢方薬が考えられます。
ただし、同じように「冷え」や「むくみ」といった不調を感じていても、その原因となる「気・血・水」の状態は一人ひとり異なります。漢方では、その方の体質や体全体のバランス（これを「証/しょう」と呼びます）を総合的に判断し、最も適した漢方薬を選びます。
ご自身の体の「巡り」について専門家に相談してみましょう
ご自身の体の「巡り」の状態を知り、それに合わせたケアを行うことは、年齢とともに感じる不調と向き合う上で有効なアプローチの一つです。
もし、ご自身の体の状態に合わせた漢方ケアにご興味を持たれたら、ぜひ専門家にご相談ください。医師、薬剤師、登録販売者といった専門家は、お一人おひとりの体質や詳しい症状を伺い、「証」を見極めた上で、適切な漢方薬選びや生活上のアドバイスをしてくれます。
漢方薬は、保険が適用されるものもあり、「高価そう」というイメージとは異なる場合もあります。安心して相談するためにも、専門家にご自身の体の状態を詳しくお伝えすることが大切です。
まとめ
年齢とともに変化する体の「巡り」は、様々な不調と深く関係しています。漢方では、「気・血・水」という考え方を通して、体の内側からバランスを整え、健やかな状態を目指します。
体の巡りを整えることは、日々の快適さを取り戻し、活動的な毎日を送るための大切なステップとなります。もし、ご自身の体調で気になることがあれば、お一人で悩まず、漢方の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。ご自身に合った方法を見つけることで、心穏やかに、より快適に過ごせるようになるはずです。